まず前半18分に酒井宏樹の右クロスを原口が頭で合わせて先制する。そして後半の75分には長谷部誠のタテパスを浅野が粘ってマイボールにして2点目を流し込んだ。それまでUAE戦と同様、数多くの決定的な場面を作りながら、本田圭佑がシュートを空振りしたり、香川真司のシュートがGKに防がれたりと嫌な流れが続いただけに、値千金の浅野のゴールと言える。そしてもう一つのビッグプレーが、後半70分にティーラシル・ダンダの至近距離からのシュートをブロックしたGK西川周作の好セーブだ。もしも失点していれば1-1のドローもあり得ただけに、UAE戦の汚名を返上するファインセーブだった。

 W杯予選では内容よりも結果が優先される。タイから勝点3を奪ったことで選手はもちろんファン・サポーターも一安心したことだろう。しかし、タイは日本陣内へ攻め込んでもボールを失うと、追うのを諦めて日本DF陣にプレスをかけなかったり、後半の65分過ぎには前線と最終ラインが間延びしたりするなど、日本との力の差は歴然だった。それなのに日本はシュートミスを連発し、終盤はバタバタしてパスミスからピンチを招いていた。

 勝つには勝ったものの、UAE戦で失った自信を取り戻すには至っていないようだし、これがW杯予選の怖さでもあるのだろう。10月はホームでイラクと、アウェイでオーストラリアとの試合が控えている。日本が本来の姿を取り戻すことができるかどうか。10月の2連戦が試金石となる。(サッカージャーナリスト・六川亨)