そして判定を巡る最大の問題となったシーンは77分、右クロスからのこぼれ球を途中出場の浅野拓磨がボレーで決めたものの、ゴールを認めなかった判定だ。アルジャシム主審に同情の余地があるとすれば、彼の位置からはゴールかどうか判定は難しかったことだろう。そこは本来ならバックスタンド側の第2副審の役目になるが、残念ながら彼は日本の攻撃に追いついて行けず、正確なジャッジを下すことはできなかった。

 終盤は吉田を前線に上げてパワープレーを試みたものの、これまで何度か埼玉スタジアムに訪れたアディショナルタイムの奇跡は起こらなかった。

 試合後のハリルホジッチ監督は淡々と敗北を受け入れ、潔くUAEの強さを認めた。2015年のアジアカップで日本を破ったメンバーが、この日も10人がスタメンに名前を連ねた。あれから約2年間を同じメンバーで戦い、さらに長期の合宿を行ってきただけに、寄せ集めの日本とはチームの完成度が違う。それでも戦わなければならないのが、海外組の多くなった日本の宿命でもある。

 過去、アジア最終予選の初戦で躓いたチームの本大会出場の可能性は0パーセントだそうだ。しかし、無敗を誇った埼玉スタジアムの神話が崩れたように、データや記録も破られるためにある。今回の敗戦は、最終予選が面白くなるとポジティブにとらえて、楽しみは次のタイ戦にとっておこう。(文・六川亨)