「クマムシ」を知っているだろうか? 体長が1ミリに満たないのに、乾燥にも超低温にも真空にも放射線にも耐えられる「最強生物」だ。しかも、顕微鏡で見る姿やしぐさは、とてもかわいい。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』で、「クマムシ」博士こと、慶応義塾大学先端生命科学研究所特認講師の堀川大樹さんにクマムシの秘密を聞いた。

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 国立極地研究所の研究グループが、1983年に南極で採取して、30年と半年の間凍結保存していたコケの中から、クマムシ2匹と卵1個を取り出し、生き返らせること(蘇生)に成功した。

 蘇生した2匹のうちの1匹は20日後に死んだが、もう1匹はやがて卵を産み、子がかえった。凍っていた卵1個も蘇生し、子がかえった。これまでクマムシの最長生存記録は、室温保存で9年だったので、研究グループは記録を3倍以上も伸ばしたことになる。しかも、蘇生したクマムシと卵の両方で、繁殖に成功した。30年半もの凍結を経て蘇生し繁殖することからみても、クマムシに与えられた「最強」の称号はダテではなさそうだ。

 クマムシは「ムシ」と名がつくが昆虫の仲間ではない。「緩歩動物門」というグループに属する動物で、8本の脚を持つのが外見上の特徴だ。歩く様子がクマのように見えることから英語で「ウォーターベアー(水熊)」と呼ばれる。これを和訳したのが「クマムシ」。約1200種類が確認されているが、ナゾの多い生き物だ。

 クマムシは海や川など水の中のほか、陸上にもすんでいるが、水がないと活動できない。周囲の乾燥が少しずつ進むと、体内の水分も失われ、「乾眠状態」に入る。乾眠状態というのは、カラカラに乾いて死んだようになることだ。呼吸や消化など体の働きをすべて止めてしまう。ところが、周囲に水が戻ってくると、乾ききった体が水を吸って元の状態に戻り、活動を始める。

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AERA dot.編集部
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