11月の大統領選挙でも、銃規制は大事な論点になりそうだ。民主党候補のクリントン氏は、「銃が犯罪者の手に渡らないようにしないといけない」と、規制の強化に前向きだ。だが、共和党候補のトランプ氏は銃を持つ権利を大切にする考えで、NRAもトランプ氏を応援している。

 今回の事件は、アメリカは「少数者」に冷たいのか、という問題も浮き彫りにした。事件は、LGBT(性的少数者)という、自分で思っている「心の性」と実際の「体の性」が異なる人たちが集まる店で起きた。容疑者がなぜこの店を襲ったか、詳しくはわかっていない。

 アメリカでは、LGBTの権利をめぐり、国を二分する争いが続いている。オバマ大統領は、同性でも結婚できるようにすべきだと考えている。15年には連邦最高裁判所の判決も、同性の結婚をすべての州で認めた。だが、共和党支持者にはこうしたLGBTの権利拡大に否定的な人が多い。

 LGBTについては、トイレなども議論になっている。政府は、すべての州に「公立学校では、心の性にあったトイレと更衣室が使えるようにすべき」との方針を伝えた。だが、共和党の州知事を中心に反発が広がり、11州が、方針の取り消しを求めて裁判所に訴えた。

 移民の受け入れをめぐっても、世論が割れている。今回の事件の容疑者はアメリカ育ちだが、両親はイスラム教徒の多いアフガニスタンからの移民だ。トランプ氏は、「だから私は(イスラム教徒の)入国禁止を要求したのだ」と語った。イスラム教徒をアメリカから締め出せば安全になる、という極端な考え方だが、世界各地でテロが相次ぎ、こうした言動に共感するアメリカ国民が多いのも事実だ。

 移民など、「自分たちと違う人たち」を拒むことで、多くの国民の支持を得ようとする動きは、6月に国民投票でヨーロッパ連合(EU)離脱を決めたイギリスでも見られた。世界各地で起こるISなど過激派組織によるテロもまた、「自分たちの仲間以外」を排除する動きだ。アメリカも、こうした「自国中心主義」の道を歩むのか。11月の大統領選挙はその答えが出る場でもある。(解説・疋田多揚/朝日新聞国際報道部)

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