――もう一つのビジョンとは、具体的にどういったことでしょうか?

 ビジョンとは、ロマンを実現するための中長期計画で、具体的な数字が入っていなくてはなりません。しかもしれは、達成不可能とも思えるほど大きな数字である必要があります。

「アメリカで家具を安く、しかも全体としてコーディネートできているのは、小売店の力が強いからだ」と思った私は、とにかく店の数を増やすことに決めました。そこで、これから30年で達成すべき目標を立てました。これが、2003年に達成した「100店舗、売上高1000億円、利益100億円」です。そして、次の30年計画として掲げているのは、「2032年 3000店舗 売上高3兆円へ」です。

──売上高3兆円ですか! 簡単ではなさそうですね。

 2016年2月期が売上高4581億円でしたから、その6倍以上です。たしかに、簡単に実現できる数字ではありません。だからこそ、「成功の5原則」の残りの三つ、「意欲」「執念」「好奇心」が重要になるのです。

――似鳥さんのお話を伺っていると、落ちこぼれだったことを忘れてしまいそうです。

 ロマンとビジョンを持つようになったおかげで、「このままではダメだ。やらなきゃならないんだ」と思って、いろいろなことを勉強しました。そうするうちに記憶力の悪い私でも、なんとか経営のやり方を覚えて、会社を動かせるようになっていきました。

 もしロマンとビジョンがなければ、何も考えず、行き当たりばったりで人生が終わっていたでしょう。人間は本来、人のため、世のために生まれてくるのです。だから「世の中の役に立つ人になろう」と志さなければいけないし、そう志すことで人生が開けてくるのです。若いうちにそうなれれば理想ですが、50歳、60歳になってからでも間に合います。