「たくさんの方に応援していただいたのに、銀メダルに終わってしまって……申し訳ないです。日本選手の主将として金メダルを取らないといけないところだったのに……ごめんなさい。自分の気持ちが、最後は勝てるだろうって思ったんですけど、取り返しのつかないことになってしまって……」

 表彰台に上っても、その涙を止めることができなかった。

「最後の最後で銀メダルで終わると思っていなかったです。悔しいです。たくさんの方に応援していただいて、本当にありがとうございました。(ロンドン五輪以降は)『打倒・吉田』でみんなが来るのがわかっていたんですけど、本当に最後の最後で落とし穴にはまると思っていなかったので……」(吉田)

 だが、そのあとにこう言葉を続ける。

「本当に、レスリングやっていて幸せです」

 インタビュー中、唯一笑顔が見えたのは2014年に亡くなった父・栄勝さんに話が及んだときだった。

「父のいない五輪は初めてだったんですけど、助けてくれるかなってどこかで思ったのが間違いかなって。でも最後の最後まで応援してくれていたと思うので、そこは信じて戦うことができました。(父には)お父さん、私をここまで育ててくれてありがとうと言いたいです」

 試合直後に観客席に向かうと、吉田と同じように涙を流す兄と母が彼女を抱きしめた。「泣かんでいいよ、大丈夫だよ、ここまで連れてきてくれたんだからありがとう」と、吉田を抱きしめながら声をかけたという。

 4連覇はならなかったが、ここまで日本のレスリングと、リオ五輪の日本選手団を率いてくれた吉田に、多くの人が同じことを思ったことだろう。(文・横田 泉)