その伊調に先んじて激戦を制した48kg級の登坂も、試合終了まで残り約10秒から逆転して手に入れた金メダルだった。うれし泣きでぐしゃぐしゃに濡れた顔のまま立った表彰台では、メダルを首にかけてもらうと、確かめるように両手で持ちまじまじと見つめた。同郷で、先に金メダルをとった柔道の田知本遥にみせてもらったのと同じ、大きな重いメダルに感慨深げだ。

「最後は、ここしかないと思い切りました。なかなか勝てずに弱かった頃から、信じてくれた家族に感謝です。今のところ、人生で一番の親孝行ができてうれしいです」(登坂)

 この日金メダルを獲得した3人のうち、唯一、世界選手権での優勝経験がなかったのが69kg級の土性だ。吉田沙保里と同じ三重県の一志ジュニア教室出身で、吉田とはタイプが違うが、やはりタックルを得意とする。ロンドン五輪金メダリストのナタリア・ボロベワ(ロシア)との決勝では、そのタックルで、試合終了まで残り30秒のところから逆転勝利を収めた。

「自分の前に試合をした(登坂)絵莉さんや伊調さんも、最後の最後まで諦めずにいたのをみて、私もやろうと思いました。本当にうれしい」(土性)

 女子レスリングは初日、出場全階級で金メダルという華々しいスタートを切った。2日目には、伊調と同じく五輪4連覇がかかる53kg級の吉田沙保里、2020年東京五輪も目指す63kg級の川井梨紗子、半年で10キロ以上の増量をして五輪出場を果たした75kg級の渡利璃穏(わたり・りお)が登場する。“前代未聞”の全階級金メダル獲得が実現するか。(文・横森綾)