14日に行われた記者会見で、4連覇への決意を語った伊調馨(左)と吉田沙保里(中央)。右は栄和人チームリーダー=ブラジル・リオデジャネイロ、深澤友紀撮影 (c)朝日新聞社
14日に行われた記者会見で、4連覇への決意を語った伊調馨(左)と吉田沙保里(中央)。右は栄和人チームリーダー=ブラジル・リオデジャネイロ、深澤友紀撮影 (c)朝日新聞社

 初めて五輪種目になった2004年のアテネ五輪から12年。いまや日本の新たなお家芸となった女子レスリング競技が、8月17日、18日(日本時間)の2日間で行われる。

 女子の個人種目では史上初の4連覇がかかる58kg級の伊調馨は17日に、同じく4連覇を目指す53kg級の吉田沙保里は18日に登場する。今回は女子の五輪実施階級がそれまでの4から6に増えたことで、伊調は63kg級から、吉田は55kg級からそれぞれ階級変更している。しかし、その影響はほぼないだろう。それというのも、二人はもともとほぼ減量がない状態で試合に挑んでおり、今も減量らしい減量はせずに済んでいるからだ。

 先に登場する伊調の五輪4連覇を危ぶむ声は、世界を見渡してもほとんど聞こえてこない。彼女の技の精度や経験に肉薄する選手はいまだ現れておらず、階級の中では飛び抜けた存在だ。かつてはアテネ・北京五輪の銀メダリストの姉・千春とともに金メダルをとることを目標に競技生活を続けていた伊調。だが、北京五輪後のカナダ留学から帰国した後、レスリングという競技そのものを探究することに関心が傾き、モチベーションも変化している。

 そんな伊調にとっての懸念材料は、今年1月のロシア遠征でオホン・プレブドルジ(モンゴル)に敗れたときにみせた、首や肩のケガと、彼女自身が持つレスリング技術への探究心だ。より複雑で多様な技術の習得を目指してきたため、以前に比べてケガをしやすくなった。また、同階級で抜きんでた力を持つために目立たなかったが、自分にもっとも適したものではない技の展開であっても、その探究心から試合で実践することがたびたびある。この二つが重なったのが、プレブドルジ戦の敗因だったとの見方もあった。

 とはいえ、普段はメダルの色にこだわる発言をしない伊調が、今回は珍しく「勝ちにこだわる。金でないと」とはっきり口にしている。リオデジャネイロ入りして以降、心身ともによい状態をキープしており仕上がりは順調な様子。「(女子)初日のプレッシャーをはねのけて沙保里さんにつなげたい」と話す。

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