彼らは、これが偶然によるものかどうかを調べたところ、その確率は、わずか0.07%でした。研究グループは、太陽系外縁部天体の軌道進化のシミュレーションを行い、軌道の偏りの原因を探りました。すると、近日点がこれらの6天体とは180度逆の方向にあって、しかも楕円軌道で公転している質量の大きい未知の天体が存在すると仮定すれば、偏った軌道分布が説明できることがわかったのです。この天体を、彼らは「第9惑星」と呼んでいます。

『最新 惑星入門』(朝日新書)の著者であり、06年に国際天文学連合「惑星の定義委員会」委員となり、冥王星の惑星からの除外を決定した最終メンバーの一人である渡部潤一先生は、「冥王星が準惑星となったきっかけを作った太陽系外縁天体エリスを発見したのも、同じカリフォルニア工科大学のグループでした。そう考えると、自分たちが失った第9惑星を自分たちで発見したい、蘇らせたいという思いが強いのかもしれません」と語ります。

 また、渡部先生によると、観測的に「第9惑星」を探す試みも始まりつつあるといいます。そして、世界の大口径望遠鏡の中で、もっとも広い視野を持ち、かすかな天体をも一網打尽にできるのは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラだけだそうです。最先端の天文学研究に、日本の望遠鏡が大きな役割を果たしているのです。

 本当に「第9惑星」があるとしたら、なにがしかの発見の報を聞くのはそれほど遠い未来ではないかもしれません。