そんな悩みを吹っ切ってくれたのは、術後から師事している平井伯昌コーチだった。決して「ああしろ、こうしろ」と指示するだけの指導ではなく、選手とヒザをつき合わせて話し合い、互いに納得したかたちで向かう方向を決めていく。そんな指導を受けるうちに、星の迷いもなくなっていった。

「レース後、平井先生の顔を見ただけで涙が溢れてしまったんですが、ここまでありがとうございました、と伝えられました」

 レース後は涙をみせた星だったが、表彰式では満面の笑みを浮かべながら、受け取った大きな銅メダルを慈しむように手をかけた。

「悔しさとかは全くなくて、やりきって、すがすがしい気持ちです。すべてを出し切ったので納得しています」

 幾度となく艱難辛苦を繰り返しながらも、それを何度も乗り越えて得た銅メダル。色は同じかもしれないが、4年前のロンドン五輪で獲得した銅メダルよりも、重たい、重たいメダルだった。

 星の銅メダル獲得に力をもらった競泳日本代表チームは、女子200m平泳ぎ世界ランキング1位で五輪を迎えた金藤理絵が、実力通りに全体2位で決勝に進出。今大会3つ目のメダル獲得を狙う萩野公介も、男子200m個人メドレー準決勝で、余力を持って決勝進出を決め、「明日は最高の勝負をしたいと思います」と、決勝への自信をのぞかせた。

 少しずつ、それでも確実に勢いづいてきた競泳日本代表チームは、星の銅メダルによって、後半戦を最高のかたちでスタートした。(文・田坂友暁)