また、「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えてきました」「皇太子の時代も含め、これまで私が皇后とともに行ってきたほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識を持って、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛を持ってなしえたことは、幸せなことでした」と、公務を重んじるお気持ちも述べられた。



 しかしその一方で、「天皇の高齢化」に伴う公務の在り方については「天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます」と、高齢化のために行事や公務を減らすということは難しいとのお考えを示した。

 また「これまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉にあたっては、重いもがりの行事が連日ほぼ2カ月にわたって続き、その後、喪儀に関連する行事が1年間続きます。そのさまざまな行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません」と、喪儀や行事が重なり家族に負担をかけることを案じられ、さらに「こうした事態を避けることはできないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります」と切実なお気持ちを明かされた。

 陛下はお言葉の最後を「国民の理解を得られることを切に願っています」と、改めて国民に向ける形で締めくくられた。

 こうした陛下のお言葉を受け、安倍晋三首相はコメントを発表。陛下の言葉を「重く受け止めています」としたうえで、「ご公務の在り方などについては、天皇陛下のご年齢やご公務の負担の現状にかんがみるとき、天皇陛下のご心労に思いをいたし、どのようなことができるのか、しっかり考えていかなければならないと思っています」と話した。(文・横田 泉)