社会人野球の観戦者は関係企業や取引先、地域の人などの団体が多い。100台単位のバスを連ねて、東京ドームに応援がやってくるチームもあった。プロスポーツと違って応援は会社主体だが、大企業による本気の盛り上げは壮観で、徹底したものだ。決勝戦に登場した日立製作所は2万人近い観客にオレンジ色のビブスを着せ、迫力を出していた。

 応援団、音楽といった演出は当然だが、イニングの合間には様々な小道具を用意した余興が行われる。そのエネルギッシュな遊び方、弾け方はまさに“昭和の日本”だ。

 もちろん時代は2016年。今の時代らしいゆるキャラのお出ましもある。ホンダ本の試合には「くまモン」が登場し、西濃運輸(大垣市)の試合では松尾芭蕉風の衣装でおなじみの「おがっきぃ」が句を披露していた。

 そのような小ネタの多さは、都市対抗の特徴だ。野球ファンは応援の様子や余興、ゆるキャラをスマホで撮影し、すぐSNSにアップする。スタンドの様子は20世紀でも、その楽しみの広まり方は21世紀流だった。

 新しいメディアと、古いエンターテイメントは相性がいい――。都市対抗が盛り上がる背景には、メディアとスポーツのそんな逆説的な関係もありそうだ。