遡ること90年代。時はバブルの時代でもあり、「若貴ブーム」と呼ばれた空前の大相撲人気が起こった。それは若貴兄弟をアイドル視した“ミーハー”人気の感が否めず、「相撲ギャル」と呼ばれる女性ファンが群がった。しかし、現在の女性ファンは相撲ギャルにあらず。「スー女」と呼ばれる彼女たちのその視点は違い、丁寧に大相撲を堪能しているように思うのだ。

 男性ファンは、ときに相撲を格闘技としての目線で見るが、スー女たちの見方は多様だ。迫力ある取組そのものはもちろんのこと、日本の伝統文化のひとつとして大相撲を捉え、その魅力を充分に味わっている。たとえば、大相撲観戦を「ハレの日」と位置づけ、着物やゆかたに身を包んで「和」を演出し、「非日常」を楽しむ。力士だけでなく、裏方たちの存在も見逃さない。行司のきらびやかな装束に目を奪われ、呼出しの声や土俵回りでの所作に注目し、裏方それぞれにコアなファンも付くほどだ。

 そしてジャニーズファンにとっての「ジュニア」、宝塚ファンにとっての「研究生」のように、まだブレイクする前の“青田買い”として、幕下以下の若い力士たちにも熱い視線を注ぐ。その成長ぶりを、母性を持って追い続ける――そんな楽しみ方もあるようだ。

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