交通至便で、アジアの街角にも似たにぎわいと、気取らなさ。アジア系の人々にとっては居心地のいい場所なのだ。留学から就職、定住する人々も右肩上がりで、2世や3世も増加している。区内の学校の子供たちは、同級生が多国籍であることが当たり前になっている。

 たくさんの文化を背景にもつ人々が寄り集まって暮らせば、もちろん問題は起きる。騒音、自転車のマナー、ごみの分別……。

 日本人同士だって隣近所とのトラブルはあるもの。それが外国人ならなおさらだ。しかし、昨年度実態調査を行ったところ、外国人の割合は増えているのに逆にトラブル経験の割合は少なくなっているという。外国人は日本のマナーやルールを理解して学び、日本人は外国人に慣れ、互いに理解が進みつつあるのかもしれない。

「問題を抱えつつも共生していこうという地域になりつつあるのかな、と思います」(鍋島さん)

 外国人、日本人、両者からの行政への要望で、最も多いもの。それは「交流の機会を増やしてほしい」という声だ。

 新宿区では、既にさまざまな取り組みをはじめている。地域の文化センターを使った日本文化の体験教室。フェイスブックやツイッターなどSNSを使って情報を発信し、また在住外国人のSNSコミュニティーとも連動していく。プラザでは「多文化共生連絡会」を開催しているが、ここには80以上の団体が参加している。日本語学校、町会、外国人コミュニティー、難民支援の団体など、国際交流や国を越えた街づくりに関心のある人々が出会い、プラザはネットワークの生まれる場所としても機能している。

「いろいろ大変なこともありますが、多文化共生を進めるためにどうアプローチしていけばいいのか考えて、手探りで進めていく楽しさがあります」(鍋島さん)

 日本に住む外国人は今後もさらに増え続ける。新宿は、多文化共生という取り組みのモデルケースとして、ますます注目を集めていくはずだ。(文・写真/室橋裕和)