「参加する方は大きく分けて3パターンになります。ひとつは、仕事を体験することで、ご自身の仕事に幅や奥行きを持たせたい方。知見を広げたい、という方ですね。もうひとつは、仕事を体験することで、具体的なスキルや仕事術を学びたい方。そして最後が、仕事を体験することで、起業、開業の参考にしたいという、情報収集を目的とした方です」

 レジャー感覚で楽しむのかと思いきや、スキルアップや起業の参考など、自身の仕事に反映させるべく臨む人が多いようだ。“大人の職業体験”ならではの特徴と言えるかもしれない。

 また気になるのは人気の職業だが、これはその人の目的によって異なるという。たとえば、非日常感を味わいたい、という人たちに人気なのが、ネイチャーガイドや探偵。森や山など、自然の中でトレッキングの案内をするネイチャーガイドは、まさに非日常を体感するのにはうってつけだ。探偵の仕事体験では“尾行体験”もできるというから、かなり本格的だ。

 一方でスキルアップを目的とした人は、自身の職業に近い仕事旅行を選ぶ傾向にあるという。そんな中で人気なのが、ブランディングディレクターやブックセレクターといった職業。ブックセレクターなどは、特に書店関係者にとって発見が多い仕事と言えそうだ。

 起業を目的とした人の場合は、花屋、お菓子屋、雑貨屋といった、開業のイメージが強い職業が人気とのこと。お菓子屋の職業体験では、お菓子作りはもちろんのこと、自宅でお菓子屋を開業する方法、開業のために必要な資金や機械といった、かなり突っ込んだ内容まで聞くことができる。

 そしてこの仕事旅行、実際に転職につながるケースもあるらしい。田中さんは「具体的な数は把握していないのですが」としつつも、「10%くらいのホスト(職場体験の受け入れ先)は、仕事旅行経由で人員獲得に繋がっているようです」と話す。実はホスト側も、この仕事旅行を企業のPRや採用ツールとして利用しているところがほとんどのため、実際に転職につながったという人も決して少なくはないのだ。

 もちろん、レジャー感覚で利用している人の人気も高く、リピーターも30%程度いるとのこと。中にはひとりで30カ所の職業体験に出かけたヘビーユーザーもいるとか。参加者からは「人との出会いがあって楽しかった」といった声もあり、もはや単なる仕事旅行の枠を超えた魅力を感じている人もいるようだ。

 今の仕事に役立てたり、転職の参考にしたり、出会いを楽しんだり……仕事旅行はいろいろな楽しみ方ができそうだ。(文・横田 泉)