マレー(左)に敗れたものの、世代交代への気配を感じさせる戦いを見せたラオニッチ(右)。(写真:Getty Images)
マレー(左)に敗れたものの、世代交代への気配を感じさせる戦いを見せたラオニッチ(右)。(写真:Getty Images)

「このあたり(10位前後)のランキングに居る選手では、たぶん一番、野心があると思います。ジムにも良く行っているし、上に行きたいという気持ちが他の選手よりも大きいと感じる」

 今大会の開幕直前に錦織圭は、ミロシュ・ラオニッチについて、そんな所感を述べていた。

 89年生まれの錦織を中心に、88年~91年生まれの世代は“ポスト・ビッグ4”と見なされるが、中でも錦織が最も気にかける存在が、1歳年少のラオニッチである。

 2年前にラオニッチにトップ10入りで先を越された時、錦織は「素直に凄いなと思います」と、敬意に似た思いを表した。

 昨年末には「ラオニッチは対戦も多いし、メディアさんに言われることもあってか、良いライバルだと感じています」と、周囲が彼らに投影するイメージも込みで、ライバルとして意識していることを認めている。

 そのラオニッチが、今季から元世界1位のカルロス・モヤをコーチにつけ、いきなり1月の全豪オープンでベスト4の好結果を残した。さらに全仏オープン後には、“天才”あるいは“悪童”の異名を取ったボレーの名手ジョン・マッケンローを、芝シーズンの期間限定コーチに雇った。

 ウィンブルドンの前哨戦でのラオニッチのファミリーボックスには、モヤとマッケンローの“元世界1位”の顔が並び、横には名コーチの誉れ高いリカルド・ピアッチも座す。その壮観を目にした錦織は、「凄い光景だ。気合いが入っているな」と感じてもいたという。

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