2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 1位~12位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 1位~12位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 14位~24位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 14位~24位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 24位~36位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 24位~36位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 39位~49位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 39位~49位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
表の見方(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
表の見方(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)

 近年の医学部人気で、受験の難易度は高まる一方だ。比較的入りやすい医学部でも偏差値60前後と、生半可な勉強では合格できない。医師になると決めたら、できるだけ早く対策を始めるのが賢明だ。週刊朝日ムック『医学部合格「完全」バイブル2017』では、医学部に強い高校を特集。受験競争を勝ち抜くための「医学部強豪校」の選び方を、専門家が分析した。

■勉強のスピードと量で公立を突き放す中高一貫

 2016年の国公立大医学部医学科・前期日程は、募集人員3661人に1万8342人が志願した。15年より志願者数は微減したものの、少子化の影響を加味すれば、医学部人気は高止まりしているとみられる。

 国公立大医学部合格者数上位50校 の全国1位には、9年連続で東海(愛知)が入った。上位9校はいずれも私立の中高一貫校で、上位50校の内訳も私立中高一貫校32校、公立高校14校、国立中高一貫校4校と、中高一貫校が圧倒している。医学部受験は、中学・高校選びから始まっている、といっても過言ではない。

 中高一貫校が医学部に強いのには、理由がある。

 まず、高校受験がないことだ。有名中学を中心に高い合格実績を誇る進学教室「SAPIX小学部」の教育情報センター本部長・広野雅明さんはこう話す。

「中高の6年間を通して切れ目ない学習が可能です。特に私立は学習指導要領の制約がないので、先取り学習で高2までに高校のカリキュラムを終えられる。高3は、医学部受験対策にじっくり取り組めます」

 また、中高一貫校の強さは、いわゆる「ゆとり教育」にも関係する。公立の小・中学校では、教員が作成したプリントを穴埋めするだけで、ノートを取る習慣はほとんどみられなくなり、宿題や予習復習も最低限しか出ない状況が続いているという。

「こういった学習環境で、医学部に受かるような学力を持つ子どもが育つかというと、正直厳しいと思います。中高一貫の進学校は、受験の主要教科にかける授業時間を、一般的な公立の1.5倍以上確保しており、演習量の差は非常に大きいです」

 では、どの地域でも中高一貫校を受験すればよいかというと、そうとも言い切れない。10位・本(熊本)、ともに12位の札幌南(北海道)、仙台第二(宮城)など、ランキング50位内に公立の14校が食い込んだ。私立が少ない地方は、今も旧制中学以来の伝統校が強い傾向にある。

中学受験がまとまった形で成立している地域は限られていて、首都圏と関西くらいです」

 医師不足が深刻な東北などの地方では、国公立大医学部の「地域枠入試」が厚い傾向にある。地元志向が強い地方の医学部志望者には、県立トップ校も魅力的だろう。

 広野さんは、こうも指摘する。

「医学部受験の『強豪校』は、大きく四つに分類できます」

 一つ目は、その地域における入学試験の難度が最も高い「超」難関校だ。灘(兵庫)、開成、桜蔭(ともに東京)など、名門の中高一貫校が相当する。国公立大医学部や難関私立に強く、現役合格率も高い。

■縦のネットワークを生かし有利な情報戦を展開

これらの学校の多くは、医学部コースを設けていないが、志望学部を問わず極めて質の高い授業を行っている。私立の少ない地方では、県立トップ校がここに分類される。

「毎年大勢の生徒が医学部に進学するので、合格者から受験情報をリアルタイムで収集でき、有利な情報戦を仕掛けていくことが可能です」

 大学でも卒業生のネットワークは健在で、「研究室や研修先の病院はどこがいい」といった情報も入ってくる。就職も同様だ。医学部受験における最上の道といえよう。

 第2の道は、「超」難関校に次ぐ、医学部に強い難関校だ。

「洛南(京都)、四天王寺(大阪)、海城、巣鴨、豊島岡女子学園(いずれも東京)などがここに分類されます」

 先の「超」難関校に比べ、私立大医学部を目標にする生徒が多くみられる。校内で医学部対策の小論文講座を設けるなど、医学部受験のサービスも充実していて、激励会や卒業生を招いた講演会を開催するなど、情報提供も積極的に行っている。

 医学部対策コースのある「医学部受験推進校」は、近年、中学受験が盛んな地域を中心に増えている。岡山白陵(岡山)、江戸川学園取手(茨城)、開智学園、栄東(ともに埼玉)、広尾学園(東京)などがそうだ。

「受験のテクニックだけでなく、医師の心得などといった心の教育にも力を入れています。志を同じくした生徒が医学部対策コースに集まるので、互いに刺激し、高め合いながら勉強できます」

 ラ・サール(鹿児島)、北嶺(北海道)、愛光(愛媛)などの「寮のある高校」は、転勤が多い家庭や、子どもがあまり勉強しない保護者に人気がある。

「寮に教員やチューターが常駐していたり、食事や洗濯の世話をしてくれたりと、面倒見がいい。生徒が勉強に集中できる環境が整っています」

 自分の学力や志望校に合う高校を選ぶことが、医師の夢をかなえる近道になりそうだ。(文・岡野彩子)

※週刊朝日MOOK『医学部合格「完全」バイブル2017』より