30分を過ぎるとガクンと運動量が落ち、日本のパスワークに後手を踏むようになる。前半37分の同点ゴールはその典型で、浅野のポストプレーから矢島が右サイドのスペースにタテパスを出すと、走り込んだ大島はまったくのフリー。大島は自分でシュートを打つこともできたが、GKを引きつけておいてから中央の中島にパスを出す。これまたフリーの中島は無人のゴールにシュートを流し込んだが、この間に南アの守備陣は誰もがボールウォッチャーになっていた。

 ダガマ監督は「25分くらいまでは身体が動いたが、フィジカルコンディションが悪くなり、足も重いと選手たちは言っていた。残念だったのは前半の最後の10分にメンタルの弱さが出て失点した」と悔やんでいたように、44分と46分に連続失点して試合の大勢は決まってしまった。後半3分には植田のタテパスをクリアし損ね、浅野にダメ押しの4点目を決められている。やはり長旅の疲れもあったのだろう。

 さて日本である。復帰組の中島は2ゴールという結果だけでなく、囲まれてもボールを奪われない高いスキルを見せて、かつて背番号10をつけていた実力を証明した。室屋も1アシストに加え、タイミングの良い攻撃参加で最終予選での活躍を彷彿させた。2人とも90分間フルにプレーしたことも、手倉森監督の期待の表れだろう。逆に途中交代した亀川と井手口は18名のメンバーに残れるのかどうか判断が難しい。

 試合後のミックスゾーンに現れた選手たちは、勝ったにも関わらず誰もが淡々と取材に応じていた。やるべきことはやったので、あとは手倉森監督の判断を待つしか選手にできることはないからだ。7月1日にはどんなドラマが待っているのか。残酷ではあるが、4年ごとに繰り返されるメンバー発表でもある。

サッカージャーナリスト・六川亨【週刊サッカーダイジェスト・元編集長】)