しりあがり:わかった。完全によみがえりました。秋月りすさん。

八巻:よみがえりました? じゃあ、ぜひ。定規使ってぜひ。

西原:あ、定規使ってる、定規使ってる。

しりあがり:あ、ホワイトがないとダメだやっぱ。

八巻:ほんとに必要ですか? あ、でもほんとに(定規)使ってるんですね。

しりあがり:OLといえば机だもんね。

八巻:ホワイトは……ないですね、ごめんなさい。

西原:なんか私が描くとサザエさんみたいになるな。でも、すごい平和でなんもない日常をずーっと描いてて、ああいうの偉いですよね。強姦(ごうかん)もないし。火事もないし。

八巻:それが連載を長く続ける秘訣(ひけつ)ですよ。

西原:そうだよね。

しりあがり:(一人で笑う)なんか、すごい新しい世界開いちゃったな。こりゃ違うと思うんだけど、どこが違うのかよくわかんないな(笑)

八巻:(のぞきこんで)それはあれですよ、つげ義春先生の絵です。どう見ても。

しりあがり:これある意味すごいな。

西原:あ、急に手が遅くなった。

八巻:定規の分だけ。

西原:こんだけ困ってんの初めて見た。

しりあがり:全然違う(苦笑)難しい。

八巻:まずこれが答えです。いやーほんとにステキに害がない線ですよね。なかなか描けないっすよこの線。

西原:あー、今見たら私の絵より新しいや。

八巻:でも連載長いですからね。じゃ、西原さんの(※写真10参照)。西原さんやっぱり絵、うまくなりましたね。この10年間で。

しりあがり:これは負けたかもしれない、俺。

八巻:でもこれだけ見て「OL進化論」とはわかんないですよね。しかもイラつくアマって書いてあるし(笑)。続いてこれがしりあがりさんのですよ(※写真11参照)。

会場:(爆笑)

八巻:あのー、定規はここ(机)に使いました。

しりあがり:そうか、本物は鼻がないんだね。鼻さえなきゃなあ。

八巻:ここ(机のはみ出た線)をホワイトで消したがってました。このはみ出たとこ。全然合ってないじゃないですかー。

西原:しかも茶箱じゃないですか。全然机じゃない。

八巻:あ、しりあがりさん、ホワイトが来ました!

しりあがり:え? ホワイト? 余計なことしやがって。

西原:さあ、腕の見せどころかな。

■世界一の引っ越し一家「ポーの一族」

八巻:そうですね、ホワイトもきたところで、「ポーの一族」にしましょうか? ちょうどね、復活したから。

西原:ああ、あの日本一の引っ越し一家。

八巻:いや、世界一の引っ越し一家です。

西原:世界一の引っ越し一家か。引っ越しが主な仕事ですね、あの人たち。

八巻:では、萩尾先生の「ポーの一族」を。

西原:(描きながら)収入はどうしてるんだと思う? 株とか持ってんのかな?

八巻:やっぱり、長生きしてますから年金が入るんじゃないですか。何百歳ですからね。

しりあがり:俺10年前に、ここの楽屋で萩尾先生に会ったんですよ。

八巻:浦沢さんと(手塚治虫文化賞10周年で)対談したんですよね。

しりあがり:すごい感激しちゃって。で、うちの子どもが「ポーの一族」のことを「ポーノー族」って読むんですよって言ったら、もうすごい何度も聞いているらしくて、ピクリともされなかった。いやーあの時は緊張した。

八巻:ポーノー族かわいい(笑)

西原:萩尾先生見ると、やっぱうれしいですね。

八巻:あ、はい。手を動かしましょう(笑)

しりあがり:なんかジョジョみたいなポーズになっちゃった。

八巻:ジョジョ?!

西原:ある日リビングですごい叫び声がするので、なにかと思ったら、うちのお兄ちゃんが、妹が「11人いる!」を読んでるのに、11人目を最初のページで教えるっていう。

会場:(爆笑)

八巻:さいてー(笑)

西原:お兄ちゃんならではの嫌がらせをしていましたね。「これだよ」って(笑)

八巻:萩尾先生にも画力対決に来ていただいたんですけど、その時に、萩尾先生と、西原さん、テルマエ・ロマエのヤマザキマリさん、あと伊藤理佐先生と一緒にやったんですよ。3人とも「萩尾先生大ファンだから」って言うんですね。「なんでも描きます。大好きですから」って。「じゃあ『11人いる!』の11人描いて下さい」って言ったら、全然描けないんですよ(笑)

西原:まず、岩石がいるんですよ(笑)岩石と、オンタ(男)とメンタ(女)がおって、そっからわかんない(笑)

八巻:萩尾先生優しいから、最初にわかりづらい4人描いてくださって、あとわかりやすい人しか残ってないですけど全然出なかったですね。青いヌーっとしてる人とか。あと岩石と……岩石2回くらい描きましたもんね。

西原:うん、うろこの人もいたんじゃないかなーみたいな。

八巻:あとフロル描いてましたよね。

西原:うん、フロルと岩石と、あとハゲがいた。

八巻:ハゲ。あ、だからうろこじゃないですか?

西原:あ、うろこか。何でもいいや。私の画力対決なんでちょっと会場行ったらキャーッて言われるんですけど、もう萩尾先生のときは私が通ってもみんな素通りです(笑)。萩尾先生目当てに海外から来てる人とかいて。少女漫画家がありとあらゆるコネで入り込んでるし(笑)。「いいですか。これから萩尾先生来ますが、サインをもらってはいけません!」って、漫画家にお触れがでるの(笑)

八巻:ちなみに「11人いる!」の正解を出してもらえますか? 会場にいらっしゃる方はほとんどお読みになってると思うんですけど。意外と11人出ないでしょ? いま思い浮かべても。

会場:(赤ちゃんの泣き声)

八巻:ごめんね、いまアンパンマン描かせますから大丈夫です。出さなくて大丈夫です! いてください!

西原:大丈夫ですよ~。

八巻:この回は大丈夫です! もう遠慮なく遠慮なく!

しりあがり:完璧です今回は。

八巻:あ、完璧! ほんとだ。え、どっちもうまいですねほんとに。

西原:萩尾望都の典型的な連載のオープニングの描き方を描いた。

八巻:じゃあこれ、しりあがり先生の(※写真12参照)。

西原:あ、キングポー。

しりあがり:上手だよね、なんかね。点描がちょっと大きかったけどね。

西原:いい感じに踊ってますね。

八巻:エドガーの髪形が全然違う気がする(笑)。キングポー、メリーベル、一応字体もこんな感じで(笑)。で、西原さんの方……西原さん似てるかも。これ見開きになってるんですけど(※写真13参照)。

しりあがり:あー。

八巻:確かに世界観は出てますね。

西原:萩尾望都は、髪の毛がよく空中に溶け出すんですよ。あの人ね、意外に色の使い方下手なんです。

八巻:色の使い方下手なんですか?(爆笑)

西原:あの時代絵の具が悪かったのかしんないけど、なんか緑とか赤とかの原色平気で混ぜちゃうんで、なんかねー透明感のない色の塗り方するんですねーあの人。

八巻:あ、これキャンディ・キャンディのつもりじゃないですか?

西原:違う違う、それユニコーン。

八巻:あ、だからこれ1本。

西原:角!

八巻:あ、角なんですねこれ(笑)

しりあがり:はいはいはい(笑)

西原:よくユニコーン出て、その後ろによくカップルのオンタとメンタが子どもん時のやつとかがあって、そんで後ろに花があって「萩尾望都先生待望の大連載!」っていうのでドキドキしてたんですよ。引っ越し一家を見るのが大好き(笑)

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