日本は、敗れはしたもののボスニアには感謝したほうがいいだろう。準決勝のブルガリアには7-2と大勝したが、気の抜けたブルガリアは“消化試合”という名のフレンドリーマッチで、日本は攻撃パターンのテストをしたようなものだった。その点ボスニアは、キリンカップを本気で取りに来た。厳しいデュエル(球際の争い)、インテンシティ(強度)の高い肉弾戦、そして攻守の切り替えの速さなどで日本に真剣勝負を挑んできた。キリンカップでこれだけ緊迫した試合も珍しい。国内組の選手にとってはめったに経験できないハイレベルな試合でもあった。

 ボスニアの2点はいずれも198センチの長身FWジュリッチが決めたもので、彼はデンマーク戦に続く2ゴールだ。1点目はブランチッチのクロスをシャドーストライカーのホジッチがヘディングシュート。これはGK西川周作がよく弾いたものの、詰めていたジュリッチが難なく決めた。そして決勝点は前述したようにステバノビッチのスルーパスをジュリッチが決めたわけだが、いずれもシンプルなクロスからの速攻を2人の選手だけでゴールに結びつけた。裏を返せば日本が一番苦手とするプレーであり、W杯アジア最終予選で最も警戒しなければならない攻撃パターンでもある。

 優勢に試合を進めていても、決めるべき時に決められなかったり、集中力を欠いてカウンターを食らったりすると手痛い目に遭うことをボスニアは教えてくれた。W杯アジア最終予選を前に、日本はこれ以上ない貴重なテストマッチを経験したと言える。

サッカージャーナリスト・六川亨【週刊サッカーダイジェスト・元編集長】)