結城秀康のものと伝えられる鎧兜
結城秀康のものと伝えられる鎧兜

 6月11日、富山市中心部に森記念秋水美術館が開館する。この美術館は、日本刀の美をテーマとしているが、甲冑(かっちゅう)など武具全般のコレクションにも優品がある。中でも大名家に伝わる品々は一見の価値ありだ。徳川家康と豊臣秀吉を“父”に持つ戦国武将のゆかりの品も展示されている。

 同美術館自慢の逸品が集められた2階の鑑賞室は黒を基調とした落ち着いた雰囲気である。足を踏み入れると、入り口左手に、ひときわ目を引く鎧兜(よろいかぶと)が……。近づいてよく見ると、胴全体に「五七桐」と「三つ葉葵」の家紋が散りばめられている。

「豊臣家と徳川家、両方の家紋を付けた戦国武将とは?」と考えながら眺めていると、同美術館学芸課長の山誠二郎さんが、結城秀康所用と伝えられていると教えてくれた。

 秀康は、恵まれない境涯を生きた武将らしい。家康の次男として生まれながら、人質のような立場として、秀吉のもとに養子に出される。当時、徳川家の嫡男・信康はすでに他界しており、本来なら跡取りとなるはずの存在だった。元服後、秀吉と家康から一字ずつ取って“秀康”と名乗った。

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