総合馬術は、五輪で実施される馬術競技の中で、最もタフな種目です。同じ人馬のコンビネーションで、馬場馬術競技、クロスカントリー競技、障害馬術競技を3日間かけて行う、トライアスロンのような競技です。ハイライトは、何と言ってもクロスカントリー競技です。自然を活かした地形につくられた6~7kmのコース上に、丸太、池、生垣、水濠、乾壕など、自然に近い状態のボリューム満点の障害物が30個以上も設置されます。障害物だけではなく、アップダウンもあります。五輪レベルでは分速570m(時速30km以上)が求められるため、まさに「疾走する」という表現がぴったりです。

 どの種目であれ、馬術競技に共通しているのは、人馬とのコミュニケーションが大切だということ。馬と人は、そのコンビネーションで1人のアスリートです。馬が担うのは主に身体的な部分、人が担うのは主にメンタルな部分です。体力面は馬がカバーしてくれるからこそ、男女が対等に競うことができるのです。そのため、競技者の年齢層も幅広く、親子で同じ競技に出ても不思議ではありません。

 ちなみに、国際競技に出場する馬にはパスポートが求められます。これは人間のパスポートとは異なり、出入国の際に呈示するわけではありません。しかし、馬名、FEI(国際馬術連盟)登録番号、個体識別のための特徴記載(毛色、性別に加え、顔や肢の部分の白い模様などについて、図示および記述で示される)、出場した競技会のスタンプ、予防接種記録などが記載されていて、これがないと国際競技会場に入ることができません。

(文・日本馬術連盟)