大一番に向け、20歳の若きエース、石川は「これまでも緊張したことはないので、今回も思い切って戦いたい」と平常心を保ちつつ、「やるからには世界一になりたい」と強い意欲をのぞかせる。

 石川、柳田といった若手選手の台頭もさることながら、ワールドカップで躍進を遂げた理由は、相手の攻撃に対してすべてを対応しようとするのではなく、捨てるものは捨て、つなぐものは確実につなぐという組織力のうえで成り立つ守備力や、前回、前々回の最終予選も経験したキャプテン清水邦広のリーダーシップ、そしてセッターの深津英臣の正確なトスと状況を呼んだ的確なアタッカー起用など、献身的なプレーが積み重なったものでもあった。

 2大会ぶりの五輪出場を目指す最終予選は、14年の世界選手権覇者のポーランド、15年のワールドリーグ覇者のフランス、そして近年は「アジアの雄」という枠を飛び越え、世界トップクラスのチームへと成長を遂げたイランなど、まさに世界のトップに君臨する国々も集まり、8チーム中4チームに出場権が与えられるとはいえ、その戦いは厳しいものになるのは間違いない。

 だが、ワールドカップの前は「男子は勝てないだろう」と、大きな期待が寄せられることもなく、開幕直後は空席が目立った会場も日を追うごとに「これまでの男子とは何かが違う」という期待を持った観客が押し寄せ、大阪、東京では連日超満員の観衆が詰めかけた。

 始まる前から「男子は厳しい」と言われ続けて来た頃とは確実に違う。何かやってくれるのではないか。対戦国は確かに強豪ばかりだが、攻めの姿勢を貫き、各々の役割を果たせば、2大会ぶりの五輪出場は決して夢ではない。

 期待を持って、最終予選のニッポン男子の戦いぶりにぜひ注目してほしい。(文・田中夕子)