佐藤浩市(さとう・こういち)1960年生まれ。東京都出身。1980年にNHK『続・続事件』でデビュー。映画『起終点駅ターミナル』『愛を積むひと』『人類資金』『草原の椅子』『最後の忠臣蔵』『誰も守ってくれない』『ザ・マジックアワー』『スターフィッシュホテル』『感染』『魔界転生』『KT』『うつつ』『あ、春』『らせん』『Lie lieLie』『美味しんぼ』『GONIN』『プ』など主演作多数(撮影/高木将也、スタイリング/喜多尾祥之、ヘア&メイク/及川久美)
佐藤浩市(さとう・こういち)
1960年生まれ。東京都出身。1980年にNHK『続・続事件』でデビュー。映画『起終点駅ターミナル』『愛を積むひと』『人類資金』『草原の椅子』『最後の忠臣蔵』『誰も守ってくれない』『ザ・マジックアワー』『スターフィッシュホテル』『感染』『魔界転生』『KT』『うつつ』『あ、春』『らせん』『Lie lieLie』『美味しんぼ』『GONIN』『プ』など主演作多数(撮影/高木将也、スタイリング/喜多尾祥之、ヘア&メイク/及川久美)
瑛太(えいた)1982年生まれ。東京都出身。2001年にTVドラマ『さよなら、小津先生』でデビュー。映画『まほろ駅前狂騒曲』『モンスターズクラブ』『僕達急行 A列車で行こう』『ワイルド7』『一命』『まほろ駅前多田便利軒』『余命1ヶ月の花嫁』『銀色のシーズン』『アヒルと鴨のコインロッカー』『サマータイムマシン・ブルース』など主演作多数(撮影/高木将也、スタイリング/猪塚慶太、ヘア&メイク/勇見勝彦)
瑛太(えいた)
1982年生まれ。東京都出身。2001年にTVドラマ『さよなら、小津先生』でデビュー。映画『まほろ駅前狂騒曲』『モンスターズクラブ』『僕達急行 A列車で行こう』『ワイルド7』『一命』『まほろ駅前多田便利軒』『余命1ヶ月の花嫁』『銀色のシーズン』『アヒルと鴨のコインロッカー』『サマータイムマシン・ブルース』など主演作多数(撮影/高木将也、スタイリング/猪塚慶太、ヘア&メイク/勇見勝彦)

 映画『64』は、前編後編合わせて4時間という骨太の大作だ。わずか7日間しかなかった昭和64年に起きた少女誘拐事件とその14年後に再び起きた誘拐事件。解決の糸口を探すなかで、警察官と新聞記者、組織と個人がぶつかり合い、おのおのの仕事をまっとうしようともがく人間ドラマだ。

 県警の広報官を演じる主演の佐藤浩市と県警記者クラブの新聞記者役の瑛太が、『アエラスタイルマガジン 31号 』(朝日新聞出版)で映画についての思いを語った。その一部を紹介する。

*  *  *

 佐藤浩市は、横山秀夫の原作を読んだときから、「これは大変な仕事になる」と覚悟したという。

「非常に責務として大きい、でも、うまくいけば自分に返ってくるものはでかいぞ、という作品だと思いました。汚い言い方をすれば、今後数年間の俺を保証してくれるというような作品ですね。でも、もし、そこで負けたなら、自分の未来が削られるぞ、という思いをもって臨みました」

『64』は、実は昨春、NHK「土曜ドラマ」として全5回で放送され、文化庁芸術祭賞大賞を受賞するなどすでに高評価を受けている。佐藤は、「ロケが終わって帰って来て、偶然再放送を15分だけ見てしまった」以外は見ていないというが、やはり、どこかで凌駕したいという思いを抱いていたはずだ。

 瑛太の場合は、実弟の永山絢斗が兄と同じ新聞記者秋川役をドラマで演じていた。当然、意識せざるを得ないわけだが、瑛太はこう思っていた。

「関係ないと言ったら嘘ですけど、それはそれで面白いかなと。弟のも見てて素晴らしい秋川だと思いましたし。でも、それを超える超えないじゃなくて、僕は佐藤浩市さんと向き合って、どんなことが起きてくるかってことをすごく楽しみにして、この作品に出ることを選んだんです」

 撮影がスタートする前日の決起集会で、広報官三上役の佐藤は、記者クラブの新聞記者役の出演者たちに向かって、「お前ら、思いっきりこいよ。俺、なんでも全部受け止めてやるから」と宣戦布告したという。瑛太が振り返る。

「僕は、そう言われるまで、ああ、浩市さんとこれからやるんだな、という意識があったんです。でもすぐに、浩市さんとやるという意識を捨てて、広報官三上に対してどう牙を剥いていくかということに切り替えようと思った。だから、そのあと現場で浩市さんと会っても、『一緒にお酒は飲みません』って最初は一切断っていたんです。秋川を現場でつくっていきたかったので。逆に言えば、現場に入るまで、まだ役をつくりきれてなかったんですね。そんな状態で一緒にお酒を飲んで、気持ちを解放しちゃうと何か曖昧になっていく気がした。だから、浩市さんだけでなく、広報室にいる綾野くんと榮倉さんと金井くんとも距離をおこうと思ってました。自分の中で役を構築してからじゃないと、ブレてしまうんではないか、役のとらえ方を間違えてしまうんじゃないか、という怖さがあったんです」

 誰もが主演になりうるような役者たちが顔をそろえるなかで、2人の役者は、葛藤し、役づくりに没入し、演じていたのだ。映画『64』が醸す密度の濃さは、そんな役者ひとりひとりの強い決意から生まれてもいるのだろう。

(文・一志治夫)

※アエラスタイルマガジン31号より抜粋