「水害のたびに日本はバングラデシュを支援してくれる。これはそのお返しです」(参加者のひとり)

 地震を支援する動きは、在日外国人社会にも広がっている。豊島区にあるモスク「マスジド大塚」は、東日本大震災でも炊き出しを行った。 ここはバングラデシュ人の多いモスクだが、豊島区近辺に住む18カ国のイスラム教徒が通っている。

「大塚の商店街の皆さんも協力してくれて、区民館でおにぎりをつくって、いわきで炊き出しをしたんです」

 そう語るのは、日本イスラム文化センターの会長、シディキ・アキールさん、在日35年になるパキスタン人だ。今回の熊本地震でも、福岡にあるモスクに、500食分の米、おむつ、ティッシュ、電池などを送ったという。マスジド大塚のスタッフも現地入りする予定だ。

 祈りの場、そして同胞同士の社交場として、イスラム教徒の暮らしになくてはならないモスクだが、日本の社会の中で生きさせてもらっているということを、彼らはよく知っている。だから地域との交流や、災害の支援は忘れない。マスジド大塚は見学はいつでも歓迎で、土曜の夜には飛び入りも参加できる食事会が催される。

 シェイクさんやシディキさんたち「重鎮」がつくりあげてきた在日イスラム、バングラデシュ社会も変わろうとしている。かつては不法就労者もいたが、いまは留学生が増えた。そしてIT関連の技術者も日本で大勢働いている。

 また日系企業のバングラデシュ進出もさかんだ。繊維産業を中心にして、1億3000万人の巨大マーケットに挑んでいる。

 これまであまり目立たなかった両国の関係だが、今後は注目されて行くだろう。ボイシャキメラはさらに大規模になっていくはずだ。

(文・写真/室橋裕和)