それでも守備を固めるカルピを崩せず、ブロッキ監督は70分にカルロス・バッカを下げてジェレミー・メネズを投入する。エースは怒りをあらわにし、ベンチに座らずにロッカールームに直行した。

 精彩を欠いたとはいえ、サンプ戦でも決勝点を挙げるなど、一発を持つバッカを下げたミランは、最後まで得点を奪えなかった。87分にブロッキ監督は最後のカードを切ったが、それはアンドレア・ポーリを下げて18歳の若手マヌエル・ロカテッリをデビューさせるという選択だった。

 結果だけを求めるのであれば、本田を入れ、これまで機能していた4-4-2に変えることもできた。だが、ブロッキ監督に対する評価基準には、結果だけでなく、プレー内容も含まれていると言われる。つまり、ベルルスコーニ会長が好むやり方で結果を残さなければいけないのだ。だからこそ、4-3-1-2にこだわらなければいけなかった。

 そしてその4-3-1-2において、本田は指揮官から評価されていないことが明白になった。ならば、本田がミランにいる意味はなくなる。本人は自身の力で名門ミランの復活に貢献したいと思っているかもしれない。だが、契約も最終年を迎えるだけに、夏の移籍も選択肢にあるはずだ。

 ただ問題は、ブロッキ監督が続投するかどうか不透明な点だ。

 確かに、新監督は会長の理想に近付こうとしている。徹底したボールつなぎは、4-4-2でカウンターを武器とした前任者のやり方と大きく異なるものだ。ポゼッション率76.9%は、今季のセリエA最高の数字である。

 しかし、会長の理想を究めるだけの戦力と環境は整っていない。残りわずかとなった今シーズン中に、会長を納得させられるプレーに昇華させられる可能性は低いと言わざるを得ないだろう。

 そしてその場合、会長がブロッキ監督に代わる新監督を呼ぶ可能性も十分にある。監督交代となれば、本田を取り巻く状況も再び変わるだろう。そのとき、背番号10はどのような決断を下すのか…。いずれにしても、すべては残り4試合とコッパ・イタリア決勝での「ブロッキ・ミラン」の出来に懸かっている。