閉店したザ・プライス千住店(イトーヨーカドー)
閉店したザ・プライス千住店(イトーヨーカドー)
千住店の歴史を振り返る展示
千住店の歴史を振り返る展示

 東京都足立区・北千住。この街で半世紀以上の長きに渡って地域住民に親しまれてきたザ・プライス千住店(イトーヨーカ堂)が4月10日、その歴史に幕を閉じた。

 前身のイトーヨーカドー千住店で51年、同社が運営するディスカウントストア「ザ・プライス」として6年。業態こそ変わったが57年もの間、北千住の住民に親しまれたイトーヨーカドー店舗の閉店とあって、最後の営業日には、大勢の地元住民や元パート従業員が来店し、別れを惜しんだ。

 閉店セールにやって来た足立区に住む40代後半男性はこう話す。

「子どもの頃、屋上遊園地がありよく遊んでいました。幼少期、青春時代、そして社会人になってから……。買い物といえばここでした。思い出は尽きません。とても寂しい」

 北千住はイトーヨーカ堂にとって特別な土地だ。国内184店舗を展開、売上高1兆2532億9600万円、従業員数3万9274人(同社HPから。2016年4月19日時点)を誇る流通大手に成長したイトーヨーカドーの創業第1号店は北千住である。わずか2坪の小さな店舗「羊華堂」からのスタートだった。

 イトーヨーカ堂によると、流通店かディスカウントストアかその業態はわからないとしながらも、「3年後をめどに(北千住の地に)出店する予定です。長きに渡り地域の皆さまに親しんで頂きありがとうございました。再び出店したその時にはまたご愛顧のほどをよろしくお願い申し上げます」(同社広報センター)

 長らく地域住民に愛されたザ・プライス千住店営業最終日の夜、店舗前には溢れるほどの客が集まった。客たちは最後の別れを惜しみつつ店頭で最後の記念とばかりに写真撮影を行っていた。閉店の20時を10分過ぎたころ、出口に並んだ従業員が最後のお客を送り出し、店長の“最後のあいさつ”が始まった。

「合計57年、皆さまのご愛顧でここまで発展してきました。また、地域の皆さまに支えられて今の千住店が繁栄してきたといつも思い、お客さまには感謝しております。本当に57年間ご愛顧、ありがとうございました」

 あいさつが終わると、同時に割れんばかりの拍手が起き、その後ドアが閉まった。従業員全員が頭を下げる。すると後ろのほうから「ありがとう」というお客の声が響き渡った。ランドセルを背負った女児児童がその様子をパシャパシャと撮影していた。彼女の目にこの光景はどう映ったのだろうか。(ライター・志村ひな子)