この研究では、視線反応計測装置を用いて赤ちゃんが他人の顔のどこを長く見ているかを調査しました。結果は、多くの赤ちゃんが鼻と口を見ていましたが、人見知りが激しい子はそうでない子に比べ、「目」を長く見る傾向が強いことがわかりました。目を凝視しすぎて脳の扁桃体(=感情・恐怖をつかさどる)が活動し、恐怖で固まってしまうと考えられます。

 人見知りが強いと、内気だとか、人が苦手だと思いがちですが、先生の研究では、逆の結果が出ています。

「視線反応計測で、赤ちゃんの視線の先を調べると、人見知りが強い赤ちゃんでも、相手の顔を凝視していることがわかりました。つまり、相手が怖いだけではなく、相手によく興味を示しているのです」と先生。

 確かに、人見知りの赤ちゃんを観察すると、快と不快が混ざった「はにかみ」を見せたり、母親にしがみつきながらも相手をじっと見ていたりします。「そう考えると、人見知りをする赤ちゃんは人嫌いではなく、むしろ、感受性豊かといえるのでは?」

 また赤ちゃんは、人見知りを経験することで、パパとママ、じいじ、ばあば、初対面の人など、相手との関係を認識したうえで、相手との距離を縮めたり、広げたりといった調整もできるようになります。「人見知りの葛藤を乗り越えることで、社会性や寛容性を身につけられるのです」

 最後に、人見知りの赤ちゃんと話すコツを教えましょう。人見知りの赤ちゃんは、相手の目が怖く、正面からじっと見られるのが苦手です。接する際は、「よそ見をしながら」が基本です。脇に立ち、目を合わせないようにしましょう。

同志社大学 赤ちゃん学研究センター 特任准教授 松田佳尚先生
理化学研究所・脳科学総合研究センター研究員、オックスフォード大学客員研究員、科学技術振興機構研究員を経て、現職。臨床発達心理士

※AERA with Baby 2016年4月号より抜粋