その後はサンダーランドがボールを持つ時間が増えて前半を終えたが、中盤5名の敵が4-4-2で戦うレスター中盤の突破に苦心した背景には、前線から下がって相手選手とボールを追う岡崎の存在がある。40分前後、ウィンガーのリヤド・マレズがボールを失った2度の場面でも、瞬時に反応してリカバリーに動く岡崎の姿があった。

 後半早々に流れを変えた場面にも岡崎は体を張って絡んでいる。立て続けにファビオ・ボリーニのシュート2本で自軍ゴールを脅かされた直後の52分、カウンターでパスを受けた岡崎は、カブルに当たり負けすることなくボールをキープ。続いて左サイドへと叩いて攻撃を継続した。理想を言えば、バーの上を越えた左足シュートを枠内に飛ばしたかったが、走り込む自身のやや後方に来た折り返しはダイレクトで決めるには難しいラストパスだった。

 交替はその10分後。FWが得点なく60分程度で真っ先に替えられたとなれば出来の悪さが想像されるが、岡崎は違う。同じく1時間強でベンチに下がった前節では、ホームを埋めた満員のレスター・ファンから、止まらない「足」と「汗」に対する労いと感謝の拍手を送られながらベンチへと下がった。この日も、中立的な立場で採点しても10点満点中7点はつけられる貢献度を示した。

 2位トッテナムに7ポイント差をつけたまま、降格候補として開幕を迎えたチームにとっては奇跡的なプレミア優勝、132年前に創立されたクラブにとっては歴史的なリーグ優勝まで残り5試合。次節では4位浮上を諦めていないウェストハムと当たるレスターだが、ホームストレートでの「快走」は難しくても、指揮官の言う「力走」を続ければ良い。昨夏の移籍当初には降格候補での定位置さえ保証されていなかったはずが、優勝候補の2トップでレギュラーを張っている「和製シンデレラFW」が体現しているように。

文=山中忍