「びっくりしたのは、葬儀屋さんの会員様向けイベントに呼ばれたこと。ある女性から『うちのおばあちゃんの葬式に来てもらえませんか? にぎやかに送ってあげたいの。予定は未定ですが……』という依頼も受けました。ご高齢の方にとっては、チンドンが幼いころの懐かしい思い出なのでしょうね」(美香さん)

 美香さんは「会話しながら宣伝するのが強み」と話し、IT全盛の時代でもチンドンならではの役割があると強調する。意外だが、楽士という楽器を演奏するチンドンマンには若者が多く、楽しげにクラリネットなどを弾く姿が見られた。

 9日に開催された素人チンドンコンクールでは、20チームが出場、岩手県から10時間かけて到着したという「チンドン寺町一座」が最優秀賞に輝いた。早稲田大、神戸大の学生チームは15度目の出場とすっかり、「古豪」の風格。学生なのでメンバーは変わっているのだろうが、大学のサークルとして活動は定着しているようだ。
 
 全日本チンドンコンクールは1955年に「全国チンドンコンクール」として始まった。チンドンマンは、ニュース映画を使ってコンクールを全国発信した。コンクール前日に金沢市、高岡市などで下車してPRも。参加者は富山を「チンドンの聖地」として認知し、「富山で優勝すれば一流」が合言葉だった。
 
「全日本チンドンコンクール」となったのは第27回(1981年)からである。80年代にはチンドンマンの高齢化などで参加が20チームを割った。しかし、80年代後半に入ると、大学生や若手が新規参入。大道芸の世界に「路上でパフォーマンス」という感覚が加わり、参加チームは増え始めた。近年は素人のコンクールも行われている。

 素人コンクールの出演者の中には、中高年のチームもちらほら。「夢★ちんどん大井川」(静岡)の“マリリンさん”によると、「お堅い仕事をしているから、女装して弾けるのが楽しいの」とのこと。年齢も方向性もアマは楽しみ方いろいろ。見ている方も楽しくなるから不思議だ。(ライター・若林朋子)