ふたを開けてみて驚いた。発売わずか1週間で4万枚以上を売り上げ、準備していた商品はあっという間に完売。15年12月からは色目を春らしくして再販売したところ、またもや1カ月あまりで20万枚を売り切った。黒崎さんは「自分の予想を大きく超えており、西松屋の販売力に驚かされた」という。

 ストレッチパンツ以外にも、元技術者たちは数々のヒット商品を生み出している。10年夏から販売しているベビーバギーは、「必要な機能に絞ることで価格を下げ、その上で安全性の高い商品を作る」ことを目標に開発し、これまで累計17万台を販売。折りたたむ時に、後ろの支柱に指を挟みにくいようにしたのが特徴だ。筆者も13年に子ども用に購入。軽くてたたむとコンパクトになるため、旅行などで重宝した。

 12年に売り出した「くみあわせマット」は、子どものおもちゃの要素が強かったカラフルなマットを、「インテリアの一部として使えるように」と床の色になじむブラウンやベージュにしたところ、280万セットを販売。重さ80キロまで耐えられ、椅子替わりにも使える「座れるおもちゃ箱」は13年9月の発売後、13万台を売り上げた。元技術者らの安全性や機能性を重視した発想、売れ筋を読む力が、同社の成長を支えている。

 これからの注目商品はレインコートと傘。レインコートはランドセルやリュックサックの上からでも着られるように、後ろの生地にゆとりを持たせた。傘は、骨に従来のような鉄やアルミではなく、軽くて強度があり、さびにくいグラスファイバーを使った。15年春に販売して人気だったため、16年も展開することになった 。

 黒崎さんは現在、2つ目の商品を開発中だ。「マス化商品(不特定多数の顧客をターゲットとする商品)の企画手法の『見える化』(企画から販売までの流れを分かりやすく示す)を図り、皆が次々とマス化商品を生み出せればうれしい」と意気込みを語った。

 会社側も「元技術者らの力を借りてPB商品を増やし、(他社と)商品の差別化を図りたい」と期待する。現在は元技術者らが開発したPB商品は全体の数%だが、徐々に引き上げていく方針だ。

 電気製品から子ども用品へ。扱う素材は異なるが、元技術者らは「ものづくりの工程は一緒。戸惑うこともあったがやりがいを感じる」と頼もしい。今後も、便利な商品を次々と世に送り出していってほしい。

(ライター・南文枝)