日本勢は全体を通じて強さを見せたものの、メダルを獲得したのは羽生(左)のみ。五輪に向けさらなる飛躍が求められる。(写真:Getty Images)
日本勢は全体を通じて強さを見せたものの、メダルを獲得したのは羽生(左)のみ。五輪に向けさらなる飛躍が求められる。(写真:Getty Images)

 フィギュアスケートの世界選手権2016は3月30日~4月2日、米国のボストンで開催された。男子は羽生結弦が銀メダル、宇野昌磨が初出場ながら7位、女子は宮原知子5位、浅田真央7位、本郷理華8位。男女ともに来季の「3枠」を確保し、フィギュアスケート王国としての強さは示した一方で、メダルは1つ。五輪まであと2年となるシーズン、浮上したのは各国との熾烈なデットヒートの構図だった。

 まず男子は、羽生と現世界王者ハビエル・フェルナンデス(スペイン)の2強対決の構図となった。同じブライアン・オーサーに師事しており、練習から切磋琢磨することで“2人で世界をリード”する存在だ。

 その2強のなかでも、羽生は今季、330点超えの世界記録をマークしており、勢いがある。ショートは、まさに今季の強さをそのまま示す演技で、“4回転2本”を見事に成功し、110.56点での首位発進。フェルナンデスは1つミスがあり、12点差で2位につけた。

 羽生は余裕さえ伺わせる表情で、こうコメントした。

「今回はいろいろと気持ちが混乱しましたが、最後には1つ1つに集中することができた。17年のスケート人生で蓄積してきた攻略法が通じた」

 ところがフリーは逆の展開に。圧倒的なリードを手にした羽生は、「ものすごく緊張していた。落ち着きと緊張の精神的なバランスがうまくとれなかった」という。フリーは3本の4回転に挑むレベルの高い内容だったが、4本のジャンプでミスがあり総合点は295.17点。期待された“三度目の”300点超えはならなかった。

 一方、同門のフェルナンデスはフリーで底力を発揮。フランク・シナトラの味わいある歌声に乗って、巧みなフットワークを披露する。3本の4回転を含むパーフェクト演技で総合314.93点をマークすると、連覇をもぎとった。

「連覇にむけて精神的に難しいシーズンでしたが、一緒に練習する結弦と励まし合い、刺激しあい、ここまで来ることができました」と笑顔をみせた。

 宇野は、ショートでは4回転を成功させて6位発進したものの、フリーは2本の4回転ともミスしてしまう。総合264.25点で総合7位に。

「今までたくさん練習してきましたが、その自分の練習を信じることが出来なかったことが悔やまれます。練習も、ただ量をやるだけではダメで、内容をもっと考えないと「いけない時期になったと感じました」と唇を噛んだ。

 男子はフェルナンデスが大幅に300点を超えたことで、羽生だけではない、確実な“300点時代”の到来を意味づける一戦だった。

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