ピケは小さく洩らしたが、62分の失点で破綻は決定的となる。左SBのアルバが敵陣で不用意な横パスをカジミーロに奪われる。モドリッチに二度のワンツーでマークをはがされ、攻め上がったマルセロについていけず中央をブレイクされ、左から侵入したクロースを自由にし、折り返されたクロスをベンゼマに叩き込まれる。人はいても、ポジションが乱れ、制御を失っていた。
「体力的な問題というよりも、単純にポジションが悪く、試合を読み切れなかった」
イニエスタは心理的混乱を強調したが、失点後に混乱を増したバルサは攻撃を受け続け、簡単に両サイドを崩される。セルヒオ・ラモスを退場で失った相手に対し、なにもできない。そして85分に右から左に大きく振られ、C・ロナウドに決勝点を突き刺された。
「立ち上がりはうまくは入れなかったね。やりたいようにプレッシャーもかけられなかった。でも、始まりが悪くても終わりが良ければ満足だよ」
マドリーのジダン監督は素直に勝利を喜んだ。彼らは苦しみを知り、辛抱強く勝者となったのだろう。
しかし、バルサが自ら死地に入ったとも言える。
「前半はとても良かった。ただ、フットボールはときに気まぐれなものさ」
バルサのルイス・エンリケ監督は不運を悔しがった。しかし、彼らは戦略で敗れていた。それは図らずも、クライフの教えに背いた罪と罰だったのである。
文:小宮良之