こうした現状に是永CEOは「カジノとリーグの分配金で経営が回ってしまうため、クラブは集客に努力しようとしません。さらにSリーグには協会が運営するヤングライオンズという23歳以下の若手チームが所属していて、クラブで選手を育ててもよい選手はこちらに取られてしまう。『育成してもチームに還元されない』と下部組織の充実に力を入れようとはしません。この2点が、シンガポールのサッカーの発展を妨げていますね」と残念そうに話していた。

 1993年に誕生したJリーグや、韓国のKリーグは近年、選手の海外流出により国内リーグの空洞化が問題になっている。それは東南アジアのリーグにも波及し、それなりの国内事情を抱えている。それでも“プロ化”という英断はレベルアップにつながっているのも事実だろう。それでも新たに“壁”が出現した。これをいかに乗り越えるか。アルビレックス新潟シンガポールの試みは、今後のモデルケースとなる可能性があるだけに、その挑戦を楽しみにしたい。

(サッカージャーナリスト・六川亨【週刊サッカーダイジェスト・元編集長】)