【進みたい診療科がわからない 私立大学6 年生 女性Bさん】


――大学のポリクリ(病院実習)でいろいろな科を回りましたが、進みたい診療科がいまひとつはっきりしません。自分はどんな科に向いているか、診療科はどんな基準で選べばいいのか、医学生のうちに知っておきたいのですが……。

 これも、医学部に入り医師になることが目標で、診療科の志望や働き方まで描けていないタイプの悩みです。

 こうした相談の場合はまず、過去の振り返りをしてもらい、少しでも興味のある診療科について、私がこれまで出会った医師の働き方を紹介して具体的にイメージできるようにします。また、キャリア支援の専門ツールを使ってその人の性格や特性、重視する価値観などを測り、合う診療料を一緒に考えていきます。

 自分の適性というのは、一人で考えてもなかなかわからなかったりするものです。私たちや先輩医師などとたくさん話し、人から引き出してもらうことも有効でしょう。

【留学などの希望はかなう? 義務年限ありの大学4年生 男性Cさん】
――周囲の勧めで医学部を目指し、無事合格して現在5年生ですが、いまだに自分がなりたい医師像がイメージできません。医師になってからのキャリアプランがなかなか決められず、悩んでいます。

 海外留学を志望する医学生は多いですが、現実はそう簡単ではありません。特に相談者のように義務年限のある大学(自治医科大学、産業医科大学、防衛医科大学など)では、卒業後は大学指定の施設で一定期間働かなければならず、その間希望どおりのキャリアを歩めるとは限りません。

 そもそも、医師の留学は医局のネットワークで行く場合がほとんど。目的が明確で、大学にとってもそれが有意義であることが前提。憧れだけでかなうものではないのです。「最先端の医療を学びたい」なら、日本も世界トップレベルです。国内留学などに視野を広げてみることも大切です。

(文・篠田麻由美)

※AERA Premium『医学部がわかる』(AERAムック)より

中村正志さん
株式会社ニューハンプシャーMC取締役・医師専任コンサルタント。大手経営コンサルティング会社を経て現職。これまで500人以上の医学生・医師のキャリア設計に携わる。医学生や研修医向けの勉強会なども主宰