川村には厳しいけれど、彼女はもともとボランチにしてはリスクマネジメントに欠けた“軽いプレー”が散見される。状況に応じて“感じるプレー”ができないのだ。それでも、彼女をスタメンに起用したのは、対中国の高さを佐々木監督は考慮したからだろう。

 後半から佐々木監督は川村に代えて岩渕を投入し、攻撃姿勢を強めて1点を返した。しかし、中国戦は勝ち点3を取らなければならない試合だった。それならリスクの高い川村ではなく、最初から岩渕をスタメンで起用して攻撃姿勢を前面に打ち出すべきではなかったか。ここらあたりに指揮官の逡巡も感じられてならない。

 ただ、中国戦の敗戦は川村だけの責任ではないことを明言しておきたい。勝たなければいけない試合で日本はどれだけ決定機を作ったか。横山のゴール以外はゼロだし、引き分けに終わった韓国戦も決定機は開始4分の横山のクロスバー直撃のシュートと岩渕の先制点だけだった。ゴールに結びつくチャンスそのものを今大会の日本は作れていない。

 その原因はミスパスの多さや意思の疎通を欠いたプレーで攻撃の連動性を欠き、アジリティ(俊敏性)やスプリント(短距離のダッシュ力)といった走力でも対戦相手に圧倒された。つまり“なでしこ”らしさがまるで発揮できなかったのだ。

 2011年のドイツW杯で優勝し、翌年のロンドン五輪は銀メダル、そして去年のカナダW杯で準優勝したなでしこジャパンではあるが、昨年に大黒柱の澤が引退したように、世代交代の波は確実に押し寄せている。それを身をもって感じたからこそ、試合後の宮間や近賀、大儀見らは瞳を潤ませていたのではないだろうか。

 結果的に、地元開催の最終予選で五輪出場を逃すのは大きな痛手である。しかし、数々の栄光に包まれたチームと指揮官の処遇をどうするかは大きなテーマだった。4年後は東京での五輪が控えているだけに、むしろ大胆な若返りを図るチャンスとするべきだろう。“なでしこジャパン”は死んだと思った方がいい。そして次なるチームの再スタートの場と今大会を位置づけるべきではないだろうか。

サッカージャーナリスト・六川亨【週刊サッカーダイジェスト・元編集長】)