第1の自信は、わかりやすく、人はこれを積み上げて自信を大きくします。ところが、第2、第3の自信が崩れることで、第1の自信も一気に崩れてしまうケースが多いのです。

 例えば、震災の場合、これまで助け合っていた家族や仲間を失います。第3の自信の大きな喪失です。さらに、けがをしたり体調が崩れたりすることで、第2の自信は低下してしまいます。震災の場合、特に際立ったのが、第2の自信のうち「生き方に対する信念」の崩壊です。

 震災を経験した人は「こつこつ努力しても、すべて流されてしまう」「大切にしていても意味がない」などと、これまでの生き方を根底的に揺さぶられた方も多いのです。

 原始人で考えてみてください。仲間を失い、体の機能が低下し、狩り場を奪われ、これまでの成功パターンも通じなくなったら……。これが第2、第3の自信を失った状態です。

 そんな人に、新しい家に入れた、仕事が見つかった、仕事で認められるようになった、「だから、もう元気を出して」は通じないのです。

■年月を味方につける

「それにしても、5年もたつのに」。そうおっしゃる方もいるでしょう。

 5年も、というのは、私たち現代人の感覚です。ところが、私たちの体はまだ原始人仕様。原始人にとって、身内が亡くなる、家がなくなる、畑や船を失うということは、非常に大きな出来事です。その危険を忘れ、生活を再建するには、時間がかかるのです。

 昔から日薬(時が癒やす)ということが言われます。例えば、愛する人を失ったとき、私たちは、最初は、初七日、四十九日、月命日と頻回に悼みますが、次第に期間が開き、一周忌、三回忌(2年目)、七年目に七回忌、十三回忌~二十七回忌と続きます。これが、本来、人が大きなショックを受け入れるプロセスなのです。

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