25分にデバンナをフリーにしてヘディングで先制されたシーンは、波状攻撃の流れからとはいえ、これまでの日本では見られなかった失点場面である。40分の2点目は阪口のパスが主審に当たって相手にこぼれる不運はあったが、この場面を含めて足元に不安のあるGK山根へのバックパスなど、選手はリスクマネジメントを考えてプレーしていたのか、疑問が残るシーンは多々あった。

 試合は前半アディショナルタイムに有吉の攻撃参加から最後は大儀見が1点を返したものの、後半の34分にゴリーにフリーのヘッドから3点目を奪われて万事休した。正直、この1敗は大きな痛手だ。これで中2日による連戦を考慮したターンオーバー制は取れないだろう。まずは韓国と中国を倒し、格下のベトナムに大勝して、最終戦の北朝鮮戦にリオ五輪出場を賭けることになる。

 初戦の完敗で、いきなりスクランブル状態になったわけだが、見方を変えれば、なでしこジャパンの実力を再確認する好機かもしれない。世界はもちろん、アジアもそんなに甘くはなく、確実にレベルアップしているということ。ファンも、リオ五輪でメダルを取るための試金石と今予選は割り切って見た方が楽しめるかもしれない。

サッカージャーナリスト・六川亨)