今井正人(c)朝日新聞社
今井正人(c)朝日新聞社

 2月28日に開催される2016東京マラソン。イベントの華やかさや、一般ランナーの出場権をめぐる競争率が高いことなどで有名だが、今年の注目ポイントはそれだけれはない。今年はリオ五輪のマラソン代表選考レースのひとつにもなっているため、五輪代表をめぐる戦いも繰り広げられるのだ。熱い競争を演じるのは、箱根やニューイヤー駅伝(NY駅伝)でも活躍した、あの選手たちだ。

 今回、最有力視されているのが、昨年の東京マラソンで日本人1位、2時間07分39秒という好記録をもつ今井正人(トヨタ自動車九州/NY駅伝5区2位)だ。大学時代は箱根の初代「山の神」。昨年は、世界陸上マラソン代表にも選出されるも、髄膜炎で無念の欠場となったが、NY駅伝での復活ぶりを見る限り期待できそうだ。レースは、彼の走りを中心に展開していくことになりそうだ。

 そんな今井を脅かしそうなのは、昨年の東京マラソンで2時間09分12秒の記録を出している佐野広明(Honda/NY駅伝7区6位)あたりか。さらに、宇賀地強(コニカミノルタ/NY駅伝4区7位)、村山謙太(旭化成/NY駅伝4区10位)などにも注目したい。2013年の世界陸上の1万メートルに出場した宇賀地、2015年の同種目に出場した村山はNY駅伝では力を出し切れなかったが、東京マラソンには照準を合わせてきているだろう。

 宇賀地、村山といったスピードランナーが、マラソンでの実績のある今井、佐野らに後半まで食らいついていければ、ラストのスピード勝負で競り勝つ可能性も出てくる。山本浩之(コニカミノルタ/NY駅伝5区区間賞)もNY駅伝の快走から期待できそうだ。

 また、彼らの過去の対決を知っていると、勝負をより楽しむことができそうだ。山本と宇賀地は第85回箱根駅伝(2009年)を走っており、ともにエース区間の2区を担当。山本は当時東洋大4年、宇賀地は駒澤大3年だった。このとき駒澤大は1区で大ブレーキがあり、宇賀地は19位でたすきを受け取っているが、その後11人抜きの快走で8位まで順位を上げている。そのとき抜いた11人の中に、実は山本がいた。

 しかしその後、当時1年だった柏原竜二の爆走で東洋大は逆転優勝を飾る。一方の駒澤大は13位に終わり、シード権を逃すという屈辱を味わった。エース区間でのごぼう抜き、そこからの逆転優勝というドラマを彩った彼らが、実業団で着実に力をつけ、東京マラソンに挑む。リオ五輪のかかったこの舞台でどんな走りをみせてくれるのか期待したい。

 さらに、今回の東京マラソンは大学生ランナーにも注目だ。今年の箱根駅伝で圧倒的な強さを見せ優勝した、青山学院大の一色恭志(箱根2区3位)、下田裕太(箱根8区区間賞)、昨年の東京マラソンに出場を予定しながら、アキレス腱の痛みから1週間前に回避することになった服部勇馬(東洋大/箱根2区区間賞)らが出場予定だ。

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