しかたないので、彼が実家に戻って親と同居することにした。

 同居してみると、それなりに居心地もいい。

 親も喜んでくれる。

 そんなある日、妻に言われた。

「わたしたち、夫婦でいる必要ないんじゃない」

 晴天の霹靂だけれど、なんとなく修復する気にもなれない。

「定年になったら、一緒に商売をしてくれる女性を探そうかなぁ」

 なんて話を彼もしていた。

 同じく介護のために夫を東京に残して、実家の関西に帰った女性。

 家に寄り付かない兄たちに比べて、帰ってきてくれた娘が父親と母親はうれしくてしかたない。

「財産は、すべてあなたにあげるから、もう東京に戻らなくていいじゃない」

 と両親は言う。

 自分の子どもたちは、成人して自由にやっている。

 実家の部屋も昔のままだし、昔からの友だちも周囲にたくさんいるし、「いいかなあ」と思えてきたらしい。

「別れの理由」は、夫婦それぞれにある。

 そして、当の本人たちも、その話題で盛り上がっていたりする。

 あまり悲壮感がない。

 これも時代かも。

「別れたから不幸」ではないのだ。