「これまでの活躍を見れば、SMAPのメンバーが承認欲求を満たし、自己実現願望の段階へと進んでいたことは明らかです。しかし、ジャニーズ事務所は、従来どおりの仕事を彼らに求めていた。そのジレンマが、独立騒動へとつながったのでしょう。そして、独立を画策してみたものの、芸能界は彼らが想像していたより厳しい世界。現実的な問題として、“干される”可能性が判明したのはないでしょうか。そして、独立を断念します。理想と現実の間の板挟み。これが、彼らの苦しみであり、40代の男性がぶつかる苦しみの正体です。ジャニーズ事務所に残ることを決めていた木村さんも、自己実現願望はありながらも、家庭という現実をとったのでしょう」(海原氏)

 この苦しみは、何もSMAPに限ったことではない。40男は、社会の中で十分な経験を積み、また、体力・気力ともに充実したもっとも働き盛りの時期。目指すべき理想の自分が見えてくる年代でもある。そんな時期に、成し遂げたい仕事と、会社から求められる仕事のギャップに悩む会社員は多い。海原氏も診療の現場でそう感じたそうだ。

「理想と現実のはざまで悩むのは、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいる状態です。なかなか前に進むことができず、いつしかガス欠になってしまう。それが心身症へとつながります」(海原氏)

 しかし、SMAPに限ってみれば、仮に仕事を干されてしまっても、これまでの蓄えで生活には困らないことも予想される。なぜ、“アクセル” を全開にして突っ走らなかったのだろうか。

「いえ、お金の問題ではありません。活躍の場所がなくなってしまうことが怖いのです。臨床の現場では、自分の活躍の場がないことに悩んでいる患者さんにも多く出会います。40代はまだ上昇志向が残っている年代。活躍する機会がない、自分の力を発揮できないことは大きなストレスとなります」

 理想と現実のはざまで苦しみ、理想をとれば、活躍の場を失う恐れがある。40男には、ストレスが容赦なく襲いかかるようだ。40男は辛いよ。“不惑”とは何なのかと嘆息したくなってしまう。