「でも、10万円の借入枠しかなかったのです。これでは焼け石に水。それでネット情報を頼りに消費者金融ではない銀行ローンを申し込みました」(同)

 消費者金融では収入の3分の1までの貸し付けしか認めない「総量規制」がある。しかし、銀行のローンはそれは適用されない。銀行は消費者金融よりも敷居が高そうにみえたが、半信半疑で借り入れを申し込むと、あっさり50万円の貸付枠が与えられた。

「しかしこの借り入れを返済するのも厳しくなってきました。そうすると消費者金融の借入枠を増やしてもらう増枠してもらうしかありません」(同)

 そうしたなかで思いついたのが確定申告で収入を過大申告し、税務署の印が入った書類を消費者金融に提出。消費者金融での借入枠を増やすことだ。一昨年、年収700万円で確定申告した。

「早速、消費者金融に連絡を取り、確定申告の書類をネット上から送りました。すると、約3時間で枠は100万円にまで増えた。ですが、その後、“想定外”の事態に遭遇したんです」(同)

 まず還付金額が約40万円ほど戻ってきた。これはうれしい想定外だ。だが4月以降、新年度となり、国民健康保険料と市県民税額が跳ね上がった。

「どちらも一回の納付額が7万円を超えています。実収入が200万円程度なので、消費者金融で借りた分を銀行ローンで穴埋め。それを今度はクレジットカードのキャッシングなどで支払う“自転車操業”で何とかやりくりしています」

 こう語るアユムさんだが、将来の不安はまったくないという。どこからそんな自信が出てくるのか。

「国民年金を支払っていません。だから将来、無年金になる可能性大です。でも、生活保護のほうが国民年金よりも高いといいますね。そっちのほうがいいかなと。それにもともとフリーターなので、今の借り入れはタイミングを見て自己破産すれば、生活保護受給も認められやすいと聞きましたから……」(同)

 そもそも、消費者金融における総量規制は多重債務を防ぐ目的で設けられたものだ。だが、これが結果として多重債務者を増やし、確定申告制度の穴を浮き彫りさせる結果になっている。昨今、その制度のあり方への見直しの声が高まっている生活保護受給制度も含めて、政治・行政は、今こそ「貧困とカネ」への問題に真摯に向き合うべきではないだろうか。

※本文中、仮名はカタカナで表記

(ライター・川村洋)