以前はニュースとして報じられて始めて入手できた大幅な電車遅延情報も、最近ではソーシャルメディアによって、より早く情報を得ることができるようになった。それでも、生身の人間が情報を発信している以上、自分が欲しい情報が必ず入手できるとは限らず、むしろその望みは薄いだろう。

 しかしこの仕組みは、機械である電車自らがさまざまなデータを収集・発信することで、インターネットを通じてどこでも・いつでも把握できる、まさにIoTが実現する「人の限界を超えることができる世界」といえる。

 電球をつけるにはスイッチが必要という隠れた思い込みが、200年間もイノベーションを妨げてきたように、多くの思い込みや過去にとらわれた常識をもってIoTと向きあえば、数十年後、私たちがいかに愚かなIoT活用を進めようとしていたか、揶揄する本が出版されていないとも限らない。

 もはや電球にスイッチは必要ないと小林氏は断言する。

「モノとモノがつながり、『人がいなくてもいい』状態が実現されれば、人間が使うスイッチは不要になる。そしてスイッチから解放された電球は、いままでは暗くて見えなかった可能性を、遠くまで照らし出そうとしている」(著書より)

 時代に乗り遅れないためには、IoTを知るだけでなく、思い込みや常識からも開放される必要がありそうだ。