電球にスイッチは必要? IoTは次世代のビジネスをどう変えるのか(写真はイメージ)
電球にスイッチは必要? IoTは次世代のビジネスをどう変えるのか(写真はイメージ)

「電球にスイッチは必要だろうか?」

 こんな書き出しで始まる『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)を執筆した、経営コンサルトの小林啓倫氏は、近年IoTに対する関心が高まる一方、「IoTアプリケーション」の点で企業は苦戦していると指摘する。

 そもそもIoTとは「モノのインターネット(Intenet of Things)」の略で、モノがネットワークにつながることで、離れた場所からでも情報のやり取りができることを指す。わかりやすくいうと、消し忘れた自宅の電気を会社から操作して消すことができる技術のことだ。

 しかし小林氏は同書の中で、「IoTで実現可能なものの本質を、私たちは十分に理解できていない」と断言している。つまり、自宅から家電をコントロールできたとしても、単にスイッチが持ち運べるようになったに過ぎず、人間が思い出さない限り、明かりはついたままなのだ。

 小林氏はIoTがフル活用された世界を「人がいなくてもいい世界」と表現し、「人の限界を超えることができる世界」でもあるとしている。

 例えば山手線では、「前よりの車両が空いております」や「車内が暑くなって参りましたので、エアコンを調節させていただきます」といったアナウンスを時々耳にする。実は山手線のE231系という車両には、車両内の気温や混雑状況をリアルタイムで把握するためのセンサーが備えられていて、車掌はそのデータによって車両の状況を把握しているのだ。

 これらのデータは車両に搭載されている通信機によって、JR東日本のサーバに送られる。それをインターネットで一般向けにスマートフォンアプリとして配信しているのが、「JR東日本アプリ」だ。その中にある「山手線トレインネット」というメニューは、各電車の現在位置だけでなく、車いすやベビーカー用のスペース、弱冷房車がどの車両なのかを教えてくれる。さらには、走っている電車ごとの外気温と各車両内の気温や混雑状況まで細かく知ることができ、次に来る電車の情報を確認すれば、適当な車両を簡単に選ぶことができる。

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