言われてみれば、神社の鳥居も、お地蔵さんのよだれかけも、赤いものばかり。本殿が真っ赤な神社もたくさんあります。慶弔の席でお赤飯を食べるのも同様の意味があるといわれています。

 また「赤ちゃん」という呼び名からもわかる通り、穢れていない、無垢(むく)の象徴、生命力の現れでもあります。加えて還暦のときには、赤い頭巾やちゃんちゃんこを送るのが習わし。還暦とは、十二支に加えて甲、乙、丙など十干といわれる暦、さらに万物は木、火、土、金、水の五元素からなるという五行の思想をそれぞれ組み合わせた60通りの暦がひとめぐりし、生まれ変わったことを示します。再び赤ちゃんのような強いエネルギーをもち、年齢からくる病気や疲れという「魔」を祓ってほしいからだといいます。

 このように、魔よけの効果があるとされる「赤」と「猿=去る」という言葉の組み合わせにより、申年には、赤い衣服で災厄を打ち破るという風習がつくられていったようです。

 さまざまな衣料メーカーが今年の申年に合わせて赤い服や下着を販売していますが、とりわけ有名なのが東京・巣鴨の地蔵通り商店街にある「マルジ」でしょう。

 12年前の申年のときには、縁起物の赤パンツを販売して大ブレーク。「おばあちゃんの原宿・巣鴨」に赤パンツありと知らしめたのです。

 この年末年始もやはりお店は大人気で、12月下旬からすでに申年にちなんだ特別グッズは品薄の状態が続いています。商店街を守る「とげぬき地蔵尊(高岩寺)」もたくさんの初詣客でにぎわっているので、混雑が落ち着いた頃に、今年の幸運を授かる申年の赤パンツを探しに行くのがいいかもしれません。

(文・室橋裕和)