そんな祖父は、わたしが、高校生の時に少しずつボケ始めて、1年ほど介護生活が続いて、家で亡くなった。

それまで、母と二人で介護生活をしていた祖母は、葬式で、

「10年は、迎えにこないでください」

 と祈っていた(笑)。

 そして、10年後、祖母は、死ぬ40日前まで元気で、ほとんど寝込まずに、家族全員に見守られてぽっくり亡くなった。

 それから、30年近い年月が流れた。

 まだぽっくり寺には行ってないけれど、なんとなくあのときの祖母の気持ちが理解できる年齢になった。

「迷惑かけずに死にたい」

「誰かに下の世話をしてもらいたくない」

 その気持ちが今はわかる。

 最近では友人と飲んでいると、よくこんな話題になる。

「80過ぎて寝込んだとき、ある薬ができて、それを飲んだら20歳の身体に戻れるけれど、必ず1年後に死ぬと言われたら、飲むか飲まないか」

 おもしろいことに、ほとんどの男性は真剣に考え込む。

 でも、わたしの周囲の女性たちはほとんどが即答。

「80歳で20歳の身体に戻れる! ぜったい飲む、飲む!」

次のページ