「とある独身女性のケースなのですが、帰省で実家に帰った時に、両親に結婚を急かされて、思わず『彼氏がいる』と言ってしまったそうなんです。後日東京に戻って仕事をしていたら、弟がやってきて『親に言われて、お姉ちゃんの彼氏に会いに来た』と。いまさら嘘だったとはいえないので、レンタル彼氏を依頼して、弟と自分と3人で一緒に食事をしてほしい、という依頼がありました」

 しかし、レンタル両親やレンタル恋人などを第三者に会わせる場合、レンタルだとバレないかどうかが心配なところ。これについては当日に打ち合わせをし、家族らしさ、恋人らしさを出すべく話し合うのだという。ちなみに料金はこの打ち合わせの時間から発生する。

 また、最近では一風変わった「レンタル夫」の依頼が舞い込んだ。依頼主は、まさかの既婚女性だ。

「すでに結婚している女性からの依頼でした。彼女は自身の結婚式は神前式で行ったんですが、数年たってから『やっぱり教会式もやってみたい』と思ったそうなんです。でもいまさらもう一度教会式をやりたいなんて、旦那さんに相談しても『何言っているんだ』と言われてしまい、参加してはもらえない。そこで教会式を挙げるために、レンタル夫にタキシードを着てもらって、一緒にバージンロードを歩いてほしいという依頼でした」

 レンタル家族の依頼中の諸経費、つまり食費や交通費などは、依頼者持ちが前提だ。なので、この場合はレンタル夫の料金に加えて、もちろん結婚式の費用も自己負担。なかなかの出費になりそうだが、女性の夢であるウエディングドレス、お金には替えられない価値があるのかもしれない。

 ちなみに、これらのサービスで派遣されるスタッフは、劇団員やモデルなどではなく「ごく普通の人」だという。以前はそういった人たちをスタッフにしていたこともあるそうだが、実際にモデルや劇団員をレンタル家族にしてしまうと、一緒に歩く際に街で浮いてしまったり、演技っぽくなってしまったり……と馴染まないことが多かったのだという。確かに依頼する側にとっても「普通の人」の方が気安いかもしれない。

 さまざまな背景で依頼が増えている「レンタル家族」。いざという時のために、チェックしてみるのもいいかもしれない。

(ライター・横田 泉)