「あれはお見送り。あるところまでファンは生徒さんをお見送りするの。女の子の世界だから。怖い方とかに遭遇しても大勢いれば生徒さんも自分たちも守れるから」

 実際、ジェンヌやジェンヌの卵である音楽学校の生徒の行く手を遮り写真を撮るお行儀がよくない男女もいるという。元タカラジェンヌのひとりは、「舞台人なので写真を撮ってくれるのはうれしいが、正直、怖い」とその胸の内を明かす。

 楽屋口近くの歩道にヅカファンらしき男性もいた。昔から女性ファンほどの人数はいないが男性ファンもいる。ヅカファンのひとりが語る。

「あんまり男性ファンのことは細かく触れんとったって。女性ばかりの世界で男の人たちも気をつかってはるやろし。わたしらはあんまり気にしてへんから」

 どこまでも女性らしい気配りと優しさをヅカファンは、皆、忘れない。

 夢の世界、タカラヅカ。その夢を壊さないルールが「すみれコード」であり、ヅカファンたちの間で自然に守られるようになったモラルである。こうしたヅカファンに支えられてジェンヌたちはわたしたちに夢を与えてくれる。

 今、宝塚歌劇団は、宝塚大劇場では冒頭部に触れた月組公演のほか、東京宝塚劇場では、花組による「新源氏物語」が上演されている。ヅカファンの心からの応援と気配りはジェンヌたちにも届いているはずだ。

(ライター・志村ひな子)