羽生結弦選手(撮影/写真部・加藤夏子)
羽生結弦選手(撮影/写真部・加藤夏子)

 グランプリ(GP)シリーズには、ドラマがある。

 羽生結弦の日本大会(NHK杯)の演技は、そう感じさせる劇的なものだった。

 昨シーズンは、不幸にして初戦の中国大会で衝突事故が起きた。以降、なかなか実力が発揮できず、GPファイナルでは意地を見せ優勝するものの、パーフェクトの演技とは言いがたかった。世界選手権では、同じくブラインアン・オーサーに師事するハビエル・フェルナンデス(スペイン)が初優勝を飾り、羽生は銀に終わった。

 そして迎えた今シーズン。ソチ五輪時に金メダルを争ったパトリック・チャン(カナダ)が復帰、早速、初戦のカナダ大会で激突した。が、結果は、チャンが271.14点に対し、羽生はSPでの出遅れが響いて259.54点の2位。4歳上のライバルに敗北を喫した。

 羽生の第2戦・日本大会(NHK杯)、今度は、下からの台頭と向き合うことになる。相手は、今年シニアデビュー、18歳の新鋭・金博洋(中国)。

 金は、初戦の中国大会、ショート(SP)で高難度の4回転ルッツ―3回転トウループを決め、フリーでは4度の4回転に挑戦し、2位。新時代を感じさせるデビュー戦だった。

 その金は、日本大会(NHK杯)SPでも、4回転ルッツ-3回転トウループを成功させ95.64をマーク、トップに立つ。金の点数を演技前に見た羽生は、「見てろよ」と闘志を燃やした。SPでは、カナダ大会よりもレベルを上げ、4回転を2度飛ぶ構成。最終滑走の羽生の結果は、世界記録の106.33点。

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