直径25センチの土俵で戦うコマ。写真や映像判定がないので行司も真剣な表情だ
直径25センチの土俵で戦うコマ。写真や映像判定がないので行司も真剣な表情だ
9カ国・地域の工場から16チームが集結した
9カ国・地域の工場から16チームが集結した

 ファスナーの世界シェア45%を誇るYKK。その製造・技術の中核拠点である富山県黒部市で12月3日、海外に展開する自社工場の生産技術者が、自作のコマを「喧嘩独楽」のように戦わせて精度を競う「第1回YKK世界コマ大会黒部場所」が開かれた。「ファスナーとコマ? どう関係あるの?」と思うなかれ。そこには、各工場がプライドをかけた技の応酬があった。

 会場は、アントニオ猪木の入場曲「炎のファイター INOKI-BOM-BA-YE」や、映画「仁義なき戦い」のテーマ曲が流れる異様な雰囲気…。米国やドイツ、中国、インドネシアなど9カ国・地域の工場から16チームが参加し、予選リーグと決勝トーナメントで熱い戦いが展開された。

 試合開始前は、かなり厳密に審査が行われる。コマの規定は「静止状態で回転軸に対し直径20ミリ以下、高さ制限なし」で、会場に入る前に専用のゲージを使って測定し、参加を認められたコマは大会主催者が試合開始まで預かるという徹底ぶりである。

 試合では、直径25センチの中央がすり鉢状になった樹脂の土俵の上で「はっけよい、のこった」の掛け声を開始の合図とし、二つのコマを同時に回す。先に土俵の外に出る、倒れる、止まると負け。行司が目視で判定する。しかし、なぜコマなのか? 担当者に聞いてみた。

「コマの素材に制限はなく、形状も思いのまま。だからこそ、どこに重心を置くか、形、表面加工の工夫、回し方などで差が出ます。緻密な設計と、高度な加工技術の試行錯誤が工場内で繰り返されることに意義があるのです。どのチームも居残って試作を重ね、大会に備えました」

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